大平山ロープウェイ

 山頂駅も建物は昔のままという感じでいいです。山麓駅のように外壁を塗装すればもうちょっと見栄えが良くなるのでしょうが、それでも昭和の雰囲気がそのまま残っているので、変に新しい駅舎に建て替えられるより、このままの方が好きです。

 山頂は公園として綺麗に整備されており、ちょっとしたアスレチック施設などもあり眺めも良く家族連れにはいい場所だと思います。昭和30年代頃に作られたロープウェイの場所にはよくあるレトロな展望台の建物も素敵ですが売店とか食堂施設がないのが残念です。せめて美味しいコーヒーぐらい飲めると嬉しいですね。

 下りは1号車の「ゆうばえ」に乗りましょう。今度は眺めのいい方向です!出発するとすぐに支柱を越えます。この日は若干霞みがかかっていましたが、それでもダイナミックな防府平野が眼下に広がります。自分はロープウェイ事体が好きなので、どうしてもアングルが遠くの景色よりロープウェイのルートの方に合わせてしまいます。

 そして中間地点で2号車の「あさぎり」と交差します。う〜ん、やっぱりこの搬器のデザインが昭和チックで魅力的です。とても2011年とは思えません。余談ですが、自分は滑車の上の部分が丸くかまぼこ型になっているのが好みです。古いロープウェイではよく見かけましたが、これも時代と共にどんどん少なくなってきています。

 そして2本目の支柱を越えるとまもなく山麓駅です。駅の周りは木が生い茂っていてジャングルのようです。ちなみにガイドのアナウンスで、山頂のツツジの植え込みなどに入るとヘビや蜂がいるので立ち入らないようにと言っていました。

 この駅舎も昭和30年代に作られたロープウェイでは典型的なデザインじゃないでしょうか!同じ山口県の火の山ロープウェイも尾道の千光寺山ロープウェイもこんな感じだったと記憶しております。もちろん山麓駅のホームに入って行く様子を見下ろすのも大好きな瞬間です。

 そして山麓駅に到着!この搬器は大阪車輌工業というメーカーの製作で、自分が好きなこの手の搬器はほとんどこのメーカー製だったと判明。しかし宮島も千光寺山も新しい搬器に架け替えられてしまったので、やはりジワジワと姿を消しているのは事実ですね。それだけに大平山にこの古い搬器が残されているのは貴重な事です。

 時間に余裕があると横から駅舎を観察できる場所を探して眺めたりします。この改札が始まってお客さんが乗り込む前の静かなたたずまいが好きなんです。蝉の声が響く中、ゆったりと時間が過ぎてゆきます。自分は景色を見るよりこういう風景をずっと眺めていたりします。

 普通のお客さんはやはり目の前に広がる雄大な景色を楽しんでいます。  わかりずらいですが、右上の茶色い道路みたいな縦ラインが新幹線の線路で大平山の下をトンネルで通り抜けていくそうです。

(2011年7月29日)

 というわけで「昭和のロープウェイ」を追い求めている自分にとっては、ここはまさに大ヒットでした。ここまで昔の状態で残されている事は奇跡的じゃないでしょうか?人気がある場所だと、どんどんリニューアルされて設備が新しくなっていきますし、あまりにも人が来ないと廃止になりロープウェイ事体がなくなってしまう中で、大平山はその中間をうまくさまよって生き残ってきたのだと思います。自分にとっては有形文化財に匹敵する程貴重に思える場所でした。この先、搬器の交換を検討される時もくるのでしょうが、昭和30年代のレジャーブームで日本中にロープウェイが作られた頃の姿がそのまま残されている稀少な存在である事を防府市の皆様には御理解頂きたいと願う次第であります。年間パスポートを購入したのでたっぷりと8往復させて頂き山を後にしました。大満足の1日でした。

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ちなみに「鉄道データファイル」240号に大平山ロープウェイの詳しい記事が載っています。
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