火の山ロープウェイ

 前日に尾道の千光寺山ロープウェイを堪能した自分はその後広島に移動して一泊、次の日、以前からネットでその存在は知っていた下関の火の山ロープウェイを訪れました。昭和33年3月完成のロープウェイですが、山頂までの自動車道「火の山パークウェイ」が無料化されてから客足が減り、2003年3月いっぱいで一度休止、ずっと運休状態になっていたようですが、2005年頃に実験的に期間運行が始まり、以後行楽シーズンなど季節運営するようになったようで、この2008年も夏期運行が8月から9月末までおこなわれている事をネットで発見した自分は行きたくてウズウズしていた。ロープウェイに乗りに行くためだけに下関まで足を運ぶのはムダづかいかなとも思ったが、またいつ廃線の危機がおとずれるかわからないと想像したら乗れる時に乗っておいた方がいいような気がして「ええいっ関門橋から飛び下りたつもりで行っちゃえ!」と意を決して向かいました。

 下関の駅からサンデン交通バスの「火の山 国民宿舎行」というのが一時間に一本でています。約15分で到着。木曜日の朝10時頃なので人がいない。「ただいま運行中」の看板が嬉しい。チケット売場で往復を買う。400円、安い!

 山麓の「壇の浦」駅の屋上に行ってみました。山頂の「火の山」駅まで全長が見渡せました。反対側は関門橋がよく見えるビュースポットでもあります。自分は橋よりもロープウェイ!駅を上から覗くとネットでいつも見ていたあのオレンジ色の搬器が見えました。

 ここのロープウェイは20分おきの運行。自分が駅に着いた時ちょうど10時20分発の改札が始まった時でした。なのに従業員のおねえさん方は何かバタバタしていました。「ネコが駅のすき間に入っちゃって追い出していたの」となんかしょっぱなから気さくな雰囲気でした。まずは1号器のまんじゅ(満珠)号で山頂へ。

 この日はちょっと霞がかかっていましたが、数日前までずっと雨だったので晴れてるだけでもありがたかった。支柱がないのでなんかスッキリしています。添乗員のおねえさんのガイドあり。やっぱり録音よりも生のガイド説明のが観光地の楽しい雰囲気が伝わってきていいですね。

 普通の人は進行方向反対側に見える関門海峡を御覧になるでしょうが自分はひたすら山頂の方を観察。中間で反対の搬器と交差。ロープウェイに乗っていて一番ワクワクする瞬間です。そして山頂「火の山駅」が近づいてきます。

 いつも感じることなのですが、ロープウェイの山頂駅からの眺めというのは展望台から見る景色にはない独特の魅力があると思います。

 山頂の駅の改札を出て1階上にあがると駅舎があります。昔は食堂や売店などがあったのでしょうが今はただの休憩所になっています。展望スペースがあるのでそこから関門海峡などがよく見渡せます。 お土産やレストランなどの施設はここからさらに10分ぐらい階段を歩いて登ったところに立派な展望台があります。

 火の山展望台です。自動車で登ってくる人はここまで直接来ちゃうのでしょうね。ロープウェイの駅がある場所よりさらに高いので眺めはまた素晴らしかったです。3階が展望スペースとお土産売場、2階は床がゆっくり回転して景色が楽しめるレストランがあります。ロープウェイ関連のグッツは何もなかった。(フグばっかり...)

 火の山展望台は素晴らしかったのですが、自分はやはりロープウェイを含んでいる景色の方が好きですね。この日は4往復したのですが、その合間は従業員のおねえさんたちとおしゃべりしたりしていました。おねえさんたちが着ていた「火の山ロープウェイ」の上着が欲しいっ!

 ここのスタッフのみなさんは本当にフレンドリー!改札にあったボードをみて「これ何ですか?」と伺ったら、これに人数を書いて上にいるオペレーターとロープウェイに添乗する人に知らせるのだと実演してくれました。自分がロープウェイ目的でここに来たと伝えたらみなさん親切にいろんな事を教えてくださいました。

 下りはかんじゅ(干珠)号に乗ります。ここの搬器は運休していた時期があるせいか正直言って塗装が傷んでいるところがあるのですが、先ほど乗ったまんじゅ号よりかんじゅ号のが傷みがひどかったんです。「普通のお客さんから、こちらのゴンドラのが古いのですか?とよく言われるんですよ」と添乗員の方がおっしゃってました。どちらの搬器も「安全索道株式会社、大阪車両工業 昭和53年」と書かれています。自分が察するには長い運休中に停まっていた山頂と山麓との環境の違いじゃないかと思いました。千光寺の搬器が昭和56年製だったのでほぼ同じ年月が経っているのですが、こちらのがぜんぜん傷みがひどかった。家も人が住まなくなるとボロになるのが早いですがロープウェイも同じなんだなあと感じました。運転しているお兄さんともお話させていただきましたが、「ゴンドラを新しくする検討はしてるんですけど....」と言うので「替えないでください!」と強くお願いしました。この昭和な搬器が味があっていいので、これをメインテナンスしてぜひ残して欲しいです。経営不振では困りますが新しい搬器を買う予算ができないように僕は祈ってます。

 関門海峡を目前にグングンと下っていきます。この日は霞がかかっていたのですが、スッキリ晴れ渡っていればもっと遠くまで見渡せるようです。まるで関門橋を見る為に作ったようなロープウェイですが、橋ができたのが昭和48年11月14日だそうなので、ロープウェイのがぜんぜん古いんですね。

 まんじゅ号と交差!この交差の瞬間が過ぎると楽しい時間の終りが近づいてきてちょっと淋しくなります。「あともう一回乗ろうか....」いや東京に戻る新幹線の時間があるのでこの日は4往復で我慢しました。(なんたって400円ですからねえ、時間があれば10往復ぐらいしたかったです。)

 山麓の壇の浦駅に到着。ゆっくりとホームに入っていきます。この瞬間も大好きです。先頭の窓から眺めていると最後にフグのイラストが近づいてきてフィニッシュです。搬器の色は「火の山」だから炎をイメージしたデザインなんでしょうね。

 山頂まで自動車で行ける場所にあるロープウェイはお客が減少して運営が困難になる事はよくあるようです。家族づれなどを考えれば一度自動車を駐車場におき、家族分の料金を払ってロープウェイに乗るより、自動車で山頂まで行ったほうが安くて楽なのは当たり前でしょう。しかし自分のようなオタクでなくてもロープウェイには独特の魅力があります。ロープウェイで登りながら眺める景色は視点が常に移動しているので一瞬とも同じ風景がなくとてもドラマチックなんです。子供の頃家族でロープウェイに乗った想い出はいつまでも記憶に残るのではないでしょうか。(稀に僕のようなロープウェイマニアになってしまう危険性はありますが...)ふつうは大人往復1000円〜2000円ぐらいの料金がかかりますが、この火の山ロープウェイは400円です。お父さんも運転の手を休めて、彼氏も彼女の肩に手を置いて、3分間の空中散歩を楽しんでみてはいかがでしょうか。経営不振→運営休止→そのまま廃止 という事が多いロープウェイですが、存続の方向で頑張っている火の山ロープウェイは本当に嬉しい存在です。SAVE THE ROPEWAY!

(2008年9月5日)

古いチケット。ゴンドラが現在と違いますね。

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