廃線が決まった三峰山ロープウェイを訪ねる

 設備点検で不備が見つかり、2006年5月19日から2007年5月31日まで運休すると発表になった。そして今年の5月頃、そろそろ再開の時期だと思い、秩父鉄道に電話で問い合わせたら、運休期間が延びて11月30日までになり、このまま廃止の可能性もあると言われた。廃止だけは免れて欲しいと思っていたら、10月5日に廃止を正式発表しました。2007年12月1日を廃止日とするようです。三峰山ロープウェイは日本で戦前に開業した数少ない一つで、また個人的にも幼少の頃乗せてもらった思い出のある場所なので、せめてもう一度駅の様子だけでも見に行こうと12時30分発のレッドアロー15号に乗って秩父へ向かった。

 西武秩父駅から秩父鉄道に乗換えて三峰口まで行く。その秩父鉄道の駅の看板。運休中のサインの上にさらに廃止の告知の紙が貼られている。  三峰口駅からバスで15分ぐらいで大輪に到着。バスの運転手さんに「ロープウェイは動いていませんよ!」と確認されてしまった。

 鳥居をくぐり坂を下りると昔からあるみやげ物屋さんがあるのだがやっぱり閉まっていた。この道は三峰神社への登山口につながっているので、週末とかは営業しているかもしれない。ロープウェイの駅はこの長い坂道を6〜7分登ってゆくと見えてきます。

 もう枯れ葉を掃除する人もいないようです。建物とか場所って人が来なくなると途端にさびれてゆきますよね。  山麓の駅舎です。誰か宿直の従業員がいると思ったのですが誰もいませんでした。

 この和風な駅舎は昭和14年の初代ロープウェイの時からのモノなんですよ。古いホームの部分も残って初代搬器のハンガー部分だけ置いてあるんです。(いつもなんでこの部分だけとってあるのか不思議だったんですが...)窓に近づいて中の様子を撮影。なんか何時でも再開できそうな雰囲気なのに....

 輸送人員を増やす為、昭和39年に20人乗りから71人乗りのロープウェイに架け替えられました。それが現在まで動いていたやつです。旧駅舎の横に作られました。ここが唯一ロープウェイのホームの様子が覗けるところです。ちょっとかがまないと見えない。きりも号が駅にたたずんでいました。昨年の5月からずっとここにいるのでしょうね。くもとり号は山頂駅です。
 しばらくこの山麓駅にたたずんだ後、42年間頑張ったこのロープウェイに2本の白いバラを捧げてきました。(もちろん「きりも号」と「くもとり号」にです。)帰りのバスを待っている間、おみやげ屋さんなどがある民家からおばさんが2人出てきたので、ちょっと声をかけたらいろいろ話してくれました。この辺の人はロープウェイに乗りに来るお客さん相手に商売をしていたわけですから廃線は相当ショックのようでした。昭和42年頃に道路で三峰神社にゆけるようになってからロープウェイの利用者がぐっと減少したそうで、少しでも活性化しようとロープウェイまでの参道も整備していた矢先に運休、廃止だったようです。そのおばさんのお話では12月に入ったらすぐに解体作業が始まるとの事。この山は三峰神社のもので、神社の方から秩父鉄道に2年以内に駅から鉄柱まで全部撤去しろと言われてるらしい。「戦前から沢山の人を神社に運んでくれたのにねえ...。それに神社で緊急な用事があれば夜中でもロープウェイを動かしてくれたのに、全部2年で撤去しろ!なんてまったく神社の人は薄情だねえ....」って言ってたおばさんの言葉がすごく印象に残りました。せめて戦前からある旧駅舎の建物ぐらい残して登山者の休憩所にしてもいいかもしれない。そこから小さな滝も見れるし。ちょっとでもロープウェイがあったなごりを残しておいて欲しいものです。

(2007年11月5日)

戦前の絵葉書「大輪駅発車刹那の三峰山ケーブル」

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三峰山ロープウェイ2005年のレポート
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